幼なじみじゃ、いられない。

「ちがっ、これはっ……!」


ハッとしたあたしは、紙袋を自分の身体の後ろに隠す。


毎年、毎年、去年まで懲りもせずに、渡せない大地くんにチョコを用意していた。

だけど、今年は──。


「これは大地くんのじゃない……」


思わず声が震える。


「あたしなんかに貰わなくったって、大地くん椎名さんにとか、いっぱい貰ってるでしょ」

「……まぁ、そうだけど」


悪びれもなく返事する大地くんに、キュッと下唇を噛む。


ほら、やっぱり。

大地くんはあたしをからかって、面白がっているだけ。

今年もチョコを受け取ってくれる気なんて、さらさらない。

……それなのに。


「もう早く行って」

「は?」

「早く行ってよ!」


強く叫ぶように言ったあたしに、大地くんが目を丸くする。

だけど、大地くんだけじゃなくあたし自身も驚いていた。


大地くんにこんなこと……言ったことなかったから。
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