幼なじみじゃ、いられない。

一瞬こそ驚いた顔をした大地くんだけど、すぐにスッと無表情になる。


そして、そっと伸ばされた手。


長い指先があたしの頬に触れそうになる……瞬間だった。


「ひな!」


遠くから呼ばれた名前に、あたし達はパッと声の方を見る。

すると、こっちに向かって駆け寄ってくるのは──りっくん。


「あ……」


あたしが小さく声を漏らしたのと、ほぼ同時。


「あー……、そういうこと」


大地くんは冷めた目で呟くと、そのままフイッと背を向けて歩き出した。


「ひなっ、ごめん、待たせちゃ悪いと思って急いだんだけど……邪魔した?」


すぐにあたしの目の前まで来てくれたりっくんは、遠ざかる大地くんの姿を見ながら問いかける。


「ううん、全然」


むしろ、りっくんが来てくれて助かった。

だって、紙袋を持つ指先が、今も微かに震えている。


びっくりした。

まさか大地くんが話しかけてくるなんて思わなかった。

……それもバレンタインの日に。
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