幼なじみじゃ、いられない。
「大丈夫?……チョコは、渡せた?」
問いかけるりっくんにハッとして前を見ると、りっくんは少し寂しそうに微笑んでいた。
「違うの……」
あたしは小さく口を開く。
そう、違う。
今年は去年までとは違う。
「大地くんには、チョコ渡してない」
ぎゅうっと、紙袋を持つ手に力を込める。
昨日、これを作りながら決めたこと。
あたしの決断を、間違っていないと誰かに背中を押してもらいたい一心で、千明ちゃんと佳穂ちゃんにもりっくんの話をした。
なのに……脳内にチラつくのは、さっきあたしを見つめた大地くんの顔。
なんでこんなタイミングで話しかけてくるの?
心に強く決めてきたのに、10年以上の想いに揺らぎそうになる。
だけど──。
あたしは振り払うようにギュッと目をつむると、持っていた紙袋をりっくんに差し出した。
「今年は……男の子は、りっくんだけ。りっくんがあたしの本命」