幼なじみじゃ、いられない。

「えっ、何で?」

「椎名さんとは別れたんだっけ?」

「次の彼女は葉月さんってこと?」


クラス中からひそひそと、そんな噂をする声が聞こえる。

でも『どうして?』って、あたしが一番聞きたい。


どうして、なんで、大地くんが……?


「ひ、ひな……」

「あ、うん、行ってくる……ね」


自分でも訳が分からないまま、席を立つ。

こんな注目を浴びた状態で向かいたくない。
だけど、注目を浴びているからこそ、向かわないわけにはいかない。



「な、何……?」


大地くんの目の前まで歩いていったあたしは、恐る恐る口を開いた。


小学3年生の頃から今まで一度も、うちのクラスに会いに来たことなんてなかった。

それが今日は、一体何の用があって……。


そんなことを思いながら、大地くんの顔を見る。すると、


「別に。通りかかったら見えたから」

「……え?」


さらりと告げられた言葉は、それはそれは予想なんて出来たものじゃなくて。

あたしは目を真ん丸にする。
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