幼なじみじゃ、いられない。

「ちょ、大丈夫?」


ゴホゴホと咳き込むあたしに佳穂ちゃんが声をかけてきて、コクンと頷く。


あたし、葉月ひな(はづき ひな)は公立の高校に通う、どこにでもいる平凡な1年生。

容姿も学力も、身体能力も何を取っても普通で、特別目立つことは何もない。


そんなあたしとは対照的なのが、同じ1年生の藤沢大地(ふじさわ だいち)。


きっと校内で彼を知らない人はいない。

そう断言出来るほど、大地くんは有名人。


アイドル並み、いやそれ以上に整った顔立ちで、『すごいイケメンが1年生にいる』と、入学したその日から学校中の噂になっていた。

最も、大地くんの人気は高校に入って始まったことじゃなく、中学の時にはもう相当モテていたけど。


高校に入って拍車がかかったようにモテて、更に有名になったのは、それに対する大地くんの態度が原因。


告白すれば、来るもの拒まず。

だから、まるで使い捨てのように3日で彼女が変わる。

女遊びの激しい最低な男の子。


……そんな大地くんとあたしは、徒歩5分もかからない距離に住んでいて、幼稚園の頃から一緒。

そして──。
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