幼なじみじゃ、いられない。

通りかかったら見えたから……?


「ご、ごめん、ちょっと言ってる意味が分かんない……」


言いながら、戸惑うあたしは視線を落とす。すると、


「だから、お前の顔見に来ただけだって」


クイッと顎を持ち上げられ、強制的に上げられた顔。


目の前には、あたしを真っ直ぐに見つめる大地くん。


「──っ、やめてっ!」


一瞬、吸い込まれるような瞳に息が止まって。

だけど、ハッとしたあたしは、振り払うように顔を背け、大地くんから一歩離れた。


「どういうつもりか分からないけど、あたし今付き合ってる人いるから、こういうことされるの困る」


実際、顎を持ち上げられた瞬間、周りから「きゃあ」と声が上がったのが聞こえた。

何も知らない周りからすれば、“そういうこと”なんだと思われてしまう。


「……付き合ってる奴って、律?」


静かに問いかける大地くんに、あたしがコクンと頷くと、


「へぇ、あいつと付き合い始めたんだ?俺のことしか見てなかったくせに」


返ってきたのは、予想を遥かに上回る言葉。
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