幼なじみじゃ、いられない。
なんで、どうしてまだ……こんな気持ちになるの?
ぎゅうぎゅうと胸は締め付けられて、息が出来ない。
じわじわと滲んでいく視界。
もうやだ。
自分の心臓を取ってまいたい。
──ギュッと胸元を掴んで、そんな風に思った時だった。
「ひなっ!」
「っ……!?」
後ろから誰かに名前を呼ばれ、腕を引っ張られ、あたしはその力のまま振り返る。
すると、そこにいたのは──大地くん。
走って追いかけてきたの……?
大きく上下する肩、少し上がった彼の息。
あたしは目の前の彼の姿に驚いて、ただただ目を丸くする。そして、
「なんっ……」
え──?
『なんで』と問いかけようとした言葉は、最後まで口に出来ず途切れた。
フワッと香った、少し甘い香水の匂い。
目の焦点が定まらないくらい、近くにある大地くんの顔。
あたしの口を塞ぐのは、とても柔らかな感触。