幼なじみじゃ、いられない。

あたし今、何されてる……?


頭の中が真っ白になって、一瞬理解出来なくて。

そんな中、フッと蘇ったのはさっき見たばかりの大地くんと椎名さんの光景──。



「っ、いやっ……!」



ドンッと音がするくらい、勢い良く大地くんの胸を突き飛ばして、離れる。

すると後によろけながらも、大地くんは真面目な顔であたしを見ていて。


「なんでっ……」


自分の唇を手の甲で拭う。

どうして?
意味が、理由が、本当に分からない。


何で大地くんが、あたしにキスなんか──。


顔が熱くて、動揺して、指の先から全身が震える。


「……」


あたしの問いに、何も言わない大地くん。

それが妙に怖くて、一歩こっちに足を踏み出した大地くんに、あたしは思わず後退さろうとした……時だった。


「ちょっと大地くん、急にどうしたの……って、え……?」


大地くんを追ってきたのだろう、パタパタと足音をさせながらあたし達の前に現れたのは、椎名さん。
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