幼なじみじゃ、いられない。


急いで準備をして、朝食を軽く済ませて。

玄関の全身鏡で自分の姿を確認してから、あたしは「行ってきます!」と、家を出た。


この前まで綺麗に咲いていた桜はもうほとんど散っていて、新緑の割合の方が多い。

日中は暖かく感じることも多くなったけど、朝はやっぱり少し寒いな……。


そんなことを考えながら、あたしは少し早足で道の角を曲がる。すると、


「おはよ、ひな」


あたしを待ってくれていたのは──りっくん。


「おはよう!」


あたしはパアッと顔を明るくして、りっくんの元へと向かう。


「ごめん、時間合わせてもらって。早く着きすぎない?」

「ううん、大丈夫。いつも遅刻ギリギリだったから、ちょうどいいくらい」


申し訳なさそうに言うりっくんに、「えへへ」と苦笑しながら返事する。


──4月、今日から新学期、2年生。

春休み中に会った時に、4月からは一緒に登校したいと言い出したのはあたし。

別の学校で、更にりっくんはバスと電車通学だから、一緒に歩けるのは途中までだけど。

それでも……。
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