幼なじみじゃ、いられない。

「バスの時間あるでしょ?行こう」


あたしがそう言って歩き出すと、りっくんは「ん」と短く返事して、あたしの手を握る。


──まだ少しドキドキする。

だけど、こうして手を繋いで歩くことにも慣れてきた。


誰かに見られたら恥ずかしいという気持ちもないわけじゃないけれど、りっくんとは学校が別だから。

変にからかわれる心配がないぶん、堂々としていられる。


「春休み、ほんと一瞬だったよね」


「今日から2年生とか実感ない」と続けて、小さなため息をつくと、


「ひなの学校もクラス替えってあるんだっけ?」


りっくんが聞いてきた。


『クラス替え』というキーワードに、ドクンと鼓動が跳ねるのは、密かにずっと気にしていたことだから。


「……うん、あるよ」

「じゃあ緊張するね。一緒になりたい人とかいる?」


続けられた質問に、一瞬息を飲む。


だって、去年までは違う言い方をしていた。

去年までは、


『──と一緒のクラスになれるといいね』


……と、言ってくれていて。
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