幼なじみじゃ、いられない。
嫌でも『彼』のことを、思い出さずにはいられない。
だけど、
「千明ちゃんと佳穂ちゃんっていう、仲の良い友達が二人いるんだけど、出来たらまた二人と一緒がいいなぁ」
あくまで普通に。
あたしは笑って、りっくんに返事する。
「もし二人が一緒で、あたしだけ別のクラスだったら、めっちゃヘコむよね」
『彼』のことは、絶対口に出さない。感じさせない。
「りっくんは離れたくない友達とかいる?」
あたしは自分から話題を逸らすように、りっくんに質問してみた。すると、
「まぁ、今クラスで仲良い奴とは出来れば一緒がいいよね」
少し考えた後に、そう返事をして。
「もしひなが一緒の学校だったら、絶対同じクラスになりたい」
穏やかに言いながら、握られた手にはほんの少し力が込められる。
去年まではそんなこと、言ったりしなかったのに。
本当はずっと、そんな風に思ってくれていたの……?
りっくんの言葉が嬉しくて、胸の奥からじんわり熱くなる。
だけど、その反面で──。
「……あたしも」
あたしは微笑んで、りっくんの手を握り返した。