幼なじみじゃ、いられない。
バスに乗ったりっくんを、手を振って見送ってから、あたしは一人で歩き出した。
するとすぐに「ヴヴッ」と、ポケットの中で震えたスマホ。
取り出して見てみると、
『ちょっとでもひなに会えて嬉しかった。学校まで気を付けて』
りっくんからメッセージが届いていた。
少しでも一緒に登校したいと言い出したのはあたしなのに、マメで優しいりっくん。
穏やかな幸せに顔を綻ばせながら、胸の奥がチクンと痛む。
今日から新学期。
今日からまた学校が始まるから……だから、りっくんに会いたかった。
あたしが意識せずとも、『彼』の噂は絶えなくて。
何もなくても姿を見ることは避けられない。
だから──。
「おーはよっ!」
スマホを片手にそのままボーッと歩いていると、後ろからポンッと肩を叩かれた。
軽く振り返ると、声をかけてきたのは佳穂ちゃん。
「おはよ」と、あたしが挨拶を返すより先に、
「なになに?もしかして彼氏?」
スマホを覗き込まれそうになり、あたしはパッと画面を隠す。