幼なじみじゃ、いられない。



バスに乗ったりっくんを、手を振って見送ってから、あたしは一人で歩き出した。

するとすぐに「ヴヴッ」と、ポケットの中で震えたスマホ。

取り出して見てみると、


『ちょっとでもひなに会えて嬉しかった。学校まで気を付けて』


りっくんからメッセージが届いていた。


少しでも一緒に登校したいと言い出したのはあたしなのに、マメで優しいりっくん。

穏やかな幸せに顔を綻ばせながら、胸の奥がチクンと痛む。


今日から新学期。

今日からまた学校が始まるから……だから、りっくんに会いたかった。


あたしが意識せずとも、『彼』の噂は絶えなくて。

何もなくても姿を見ることは避けられない。


だから──。



「おーはよっ!」


スマホを片手にそのままボーッと歩いていると、後ろからポンッと肩を叩かれた。

軽く振り返ると、声をかけてきたのは佳穂ちゃん。


「おはよ」と、あたしが挨拶を返すより先に、


「なになに?もしかして彼氏?」


スマホを覗き込まれそうになり、あたしはパッと画面を隠す。
< 66 / 138 >

この作品をシェア

pagetop