幼なじみじゃ、いられない。


「……ごめん」


──え?


ひと言、ぽつりと、寝ているあたしに向かって落とされた言葉。


教室の中なら間違いなく聞き逃しているだろう小さな声。

だけど、物音ひとつしない保健室の中で、その声ははっきりとあたしの耳に届いた。


……でも、なんで?

『ごめん』って、何が?


言葉の意味が分からず、硬直したまま。


すると、ギシっと再びベッドが軋む音がして、気配が遠ざかる。

そのままカーテンを閉める音が小さくして、あたしは思わず起き上がっていた。


揺れるカーテンの向こう側、一瞬見えた姿。



「あ……」


今の今まで寝たフリしていたくせに、自分が何をしようとしたのか分からない。

保健室を出ようとしていた彼に、あたしは咄嗟に声を掛けようとして──。
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