幼なじみじゃ、いられない。
「こっち戻ってきてたの!? いつから?」
「この4月に戻ってきたばっかりだよ。覚えててくれて嬉しい」
にっこり笑って、両手を合わせる美波ちゃん。
その笑顔は子どもの頃と変わらなくて、一気に記憶が蘇ってくる。
「ほんとは昨日話しかけたかったんだけど、ひなちゃん早退しちゃったでしょ?……あ、またひなちゃんって呼んでもいいかな?」
「もちろん!」と食い気味で頷くと、美波ちゃんはホッとしたように笑ってから、「もう体調は大丈夫?」と訊いてきた。
「あ、うん、大丈夫……」
返事しながら、久しぶりの再会に昂っていたはずの感情が、一瞬にしてヒュッと萎むのを感じる。
昨日の早退、体調不良。そこから思い出さずにいられない……彼のこと。
そうだ、幼稚園の頃から友達だった美波ちゃん。
つまりは──。
「そういえば、藤沢くんも一緒でびっくりしちゃった」
予想はしていたけど、実際に美波ちゃんの口から出てきた名前にビクッとする。
「最初は“あの藤沢くん”だって全然気付いてなかったんだけど、倒れたひなちゃんを保健室に連れて行ってるのを見て気付いたの。今もしかして付き合ってたりする?」