あの日のままで
そこから放課後は体育館に足を運ぶ日々が始まった。それからあっという間に1年が過ぎた。
部員とも顧問の桜庭先生ともかなり仲良くなった。私は充実した日々を過ごしていた。

7月15日。私の誕生日だ。教室でみんなに祝ってもらい、私は幸せをかみ締めながら部活へ向かった。
『深沢、ちょっといいか?』
桜庭先生だ。
「はい。」
(今度の大会の相談かな?)
私はそう思いつつ先生のいる部室に向かった。
先生が冷蔵庫を開けた。そこには大量のアイスがあった。私には到底買えないハーゲンダッツもある。
「え?なんですか、これ。」
私は尋ねた。
『誕生日プレゼント。』
先生はそう答えた。
(え、待って、どういうこと?誕生日プレゼント?)
私の頭はハテナでいっぱいになった。
「え、え?誕生日プレゼントって私にですか?え、なんで、どうしてですか?」
『いいだろ、別に。普段の感謝の気持ちだよ。いらねーなら俺食うけど。』
「いや、いりますけど。いいんですか?本当に。」
『さっきからいいっつってんだろ。本当に俺食うぞ。』
「やめてください!ありがとうございます!ちゃんとぜーんぶ美味しくいただきます!」
『ふん、喜んでもらえたならよかった。それ全部食べたら太るな、確実に5キロは。』
「意地悪言わないでください。」
『ふっ、じゃあ練習始めるぞ。あ、部員には内緒にしろよ。あいつらにはやらねーから。』
「はい…。」
不思議な気持ちだった。なんで先生は私にだけくれたんだろう。なんでこんなにも優しくしてくれるんだろう。普段からそうだ。私が少しでも落ち込んだ表情を見せるとすぐに気づいてくれるし、相談にのってくれる。何時間でも。例え夜の7時8時を過ぎても。奥さんもお子さんもおうちで待ってるはずなのに。
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