敏腕パイロットは契約妻を一途に愛しすぎている
欲しかった言葉
それから二日後の土曜日のこと。
午後八時に仕事を終えて外に出ると、私のことを待ち構えていたかのように和磨が現れた。目が合って逃げようとした私の手首を和磨が掴んで引き戻す。
「杏、どうして俺の連絡を無視するんだ」
「離してよ」
和磨から連絡があったのはおととい。ブロックをかけて応じずにいたのだが、まさか直接会いに来るとは思わなかった。
「話がしたい。少しでいいから時間を作ってくれないか」
「嫌に決まってるでしょ」
私は和磨を睨むように見つめた。
この人は自分が私になにをしたのか忘れているのだろうか。
クリスマスツリーの下で和磨たちが話していた会話が蘇る。私のことを金づるとしか思っていなかった男と今さら話すことなんてなにもない。とにかくもう関わりたくない。
「お願いだから離して」
手首を掴む和磨の手をなんとか振り解くと、足早に歩き始めた。そのあとを和磨が追いかけてくる。
「待てよ、杏」
「着いてこないで。こうやって会いに来られても困るの。私たちはもう他人でしょ」
「そんな冷たいこというなよ」
和磨が私の肩を掴んで強引に振り向かせた。
「俺は、杏とよりを戻したいんだ」
「は?」
この人、今なんて言った?