敏腕パイロットは契約妻を一途に愛しすぎている

 信じられない言葉に思わず歩く足を止めて目を見開いた。そんな私の肩を強い力で掴んだまま和磨が口を開く。

「離婚して気付いたんだ。俺にはやっぱり杏しかいないって。俺は杏が好きだ。だからまた俺とやり直してくれないか」
「なにそれ……」

 呆気に取られて他に言葉が出てこない。

 和磨は私がなにも知らないと思っているのだろう。初めから私を金づるにしようとしていたことも、私と結婚する前から別の女性と関係を持っていたことも。

 でも、私はクリスマスイブの夜にすべてを知ってしまった。和磨が私を好きでやり直したいなんて本気で思っているはずがない。きっとまたなにか裏があって、私のことを騙そうとしているに決まっている。

「ふざけないで。やり直すわけないでしょ」
「俺はやり直したいんだ。頼むから俺のところに戻ってきてくれないか」
「戻らない。それに私、再婚したの」
「……は?」

 和磨の眉がピクッと持ち上がる。

「勝手に再婚すんなよ。別れろ、今すぐ。それでまた俺と結婚すればいいだろ」
「なに言ってるの。和磨ちょっとおかしいよ」

 さすがに恐怖を覚えて一歩後ずさる。けれどすぐに距離を詰められて和磨の必死な顔が近づいてきた。

「なぁ、杏。頼むから俺とやり直してくれ。彼女とも別れたから」
「別れた?」

 クリスマスイブの夜はあんなに体をくっつけて話していたのに?

 でも、だからといって私には関係ない。
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