敏腕パイロットは契約妻を一途に愛しすぎている

 徐々にスピードを上げて地上を滑走していく機体がやがて持ち上がり、青空に吸い込まれるように飛び立っていく。

 あの日の光景を思い出しながらそっと顔を上げると、口を閉じたまま目を見張ってなぜか私のことをじっと見つめている匡くんと視線が絡んだ。

「どうしたの?」

 首を傾げると、ハッとしたように我に返った匡くんが一度瞼を伏せる。すぐにまた私に視線を戻すと、表情を緩めた。


「その言葉、ずっと欲しかった」


 その言葉……?

 いったいどの言葉を差しているのかわからずきょとんとしている私を匡くんが優しく目を細めて見つめる。そのまま静かに上半身を起こした彼が、覆い被さるようにして私の顔の横に両手をついた。

「杏、愛してる。俺はずっとお前が好きだ」

 ゆっくりと匡くんの顔が近づいてきて、やがて唇に吸い付くようなキスをされた。角度を変えて繰り返されるキスに次第に息があがって苦しくなる。

「ん、匡く……」

 名前を呼ぼうと開いた口にぬるりと舌を差し込まれ、すぐに私の舌を絡め取った匡くんがキスをさらに深くしていく。

 ベッドに組み敷かれた状態で受ける甘く激しいキスに意識がとろけていきそうだ。

 さっきは耐えると言ったのに、いったいどこで彼のスイッチが入ってしまったのだろう。

 でも、こんなに気持ちのいいキスならもっと続けたい。匡くんにもっと触れてほしい――。
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