敏腕パイロットは契約妻を一途に愛しすぎている
そう思ったのに、ちゅっというリップ音を残して匡くんの唇が離れていく。私と彼の唇をつないでいた銀色の糸がぷつんと切れた。
「これ以上は止められなくなる」
私に覆い被さっていた匡くんが体を離す。
「俺ばかりが杏を好きな状態でこの先に進んだら、俺がただお前を無理やり襲っているだけだよな」
そう言って自嘲的な笑みを浮かべる匡くんに向かって、気が付くと私は首を大きく横に振っていた。
「無理やりじゃないし、襲われるなんて思ってないよ。私も、そうしたいって思った」
さっきまであんなに情熱的なキスをしておいてここでやめないでほしい。そう思ってしまうほど、とっくに私は彼に惹かれている。
「私、もう匡くんのことお兄ちゃんみたいだなんて思ってない。男の人として好きになりかけてる」
今の自分の素直な気持ちを告げた。
「杏」
囁くように私の名前を呼んだ匡くんが私の両手首を掴んでシーツに縫い付ける。再び彼は私を組み敷いた。
「だったらもっとしっかり俺を好きになれ」
熱を孕んだ瞳に見下ろされて体の奥がきゅんと疼く。
好きになりかけているんじゃなくて、たぶんもう好きだ。