敏腕パイロットは契約妻を一途に愛しすぎている
でも、今さら慰謝料を請求するために動くことに前向きにはなれなかった。
あの和磨がすんなりと応じるとは思えない。応じない場合は弁護士に依頼して訴訟を起こすことになると匡くんは話していたけれど、正直そこまで大事にしたくないという気持ちもある。
だから慰謝料請求については少し考えさせてほしいと匡くんには伝えた。でも、やはり必要なことだと今は思う。
私のことを騙して結婚したことも、必要なくなったらすぐに切り捨てて離婚したことも、和磨はおそらく罪悪感を持っていなければ反省だってしていないはず。だから自分勝手にまた復縁を迫ってきているのだ。
私がどれだけ精神的な苦痛を味わったのかわかってほしいし、ひと言でいいから謝罪が欲しい。それを形にするのが慰謝料なのだとしたら、しっかりと請求するべきだ。
迷っていたけれど覚悟を決めた私はさっそくその日のお昼休憩にスマートフォンを手に取り、和磨宛てにメッセージを送った。