敏腕パイロットは契約妻を一途に愛しすぎている
不倫がわかったときも、離婚をしたときも。そして、初めから私を騙すために結婚したとわかったときも。私は和磨になにも言い返すことができなかった。ただ現実を受け入れて悔しい涙を流しただけ。
やられっぱなしはもう嫌だ。
「まさか杏から会いたいと言ってくるとは思わなかった。もしかして復縁のこと前向きに考えてくれた?」
目の前に座る和磨が飲み物を口にする。カップをテーブルに置くと、椅子の背もたれに背中を預けて足を組んだ。
「不倫については悪かったと思ってる。あの女とはもう縁を切ったんだ。俺の気の迷いだった。杏と別れてから、やっぱり俺には杏しかいないって気付いたんだよ」
私の目を真っ直ぐに見つめて話す和磨が、平気な顔で嘘をつく人だと私はもう知っている。
きっと反省なんてしていないだろうし悪いとも思っていない。彼女と縁を切ったのも本当かどうかわからない。復縁したいと迫ってくるのも私のことが好きだからではなく、なにか裏があるから。
私は静かに首を横に振った。
「復縁は絶対にしない」
和磨の目をじっと見つめ返す。ここで逸らしたら負けだと思った。
「それに和磨、私のこと最初から好きじゃなかったんでしょ。和磨にとって私はただの金づる。美容室を開くためのいいカモだったんだよね」
「なっ……お前どうしてそれを……」
和磨の一重の細い目がこれでもかというほど大きく見開いた。