敏腕パイロットは契約妻を一途に愛しすぎている

「もしも支払いに応じてくれないのなら弁護士に依頼して訴訟を起こすことになる」
「なっ……マジかよ。そこまでする気か」
「そこまでしないと、あんたみたいな人間は反省しないだろ」

 匡くんの声色が鋭く変わった気がした。

「こっちはあんたの不貞行為の証拠がきちんと揃ってるんだ。俺の知り合いの弁護士に確認したけど、その証拠があれば裁判でこちらが勝てる確率が高いらしい」
「和磨、これ離婚するときにも見せたと思うけど……」

 私はバッグからスマートフォンを取り出した。画像を保存しているアプリをタップして開くと、目的の写真を探して和磨に見せる。

 そこには和磨と彼女がラブホテルに入っていく様子や、彼女のアパートに和磨が入っていく様子の写真が数枚。

 それと、和磨と彼女が交わしたメッセージのやり取りを和磨のスマートフォンの画面ごと撮った写真があり、ふたりで入ったラブホテルの話や、そこで行為があったと思われる生々しいやり取りが記録されている。

 それらを見せられた和磨の顔色が徐々に青白くなっていった。

「ま、待ってくれよ。今、裁判なんて起こされたらスタッフからの信頼を失うし、店の評判にも関わるだろ」
「そう思うなら話し合いで解決させればいい。こちらとしても訴訟までは起こしたくないんだ」

 さっきまでの威勢がどこかに消えてしまったらしい和磨の声は震えていた。一方の匡くんの声色は鋭さがなくなって落ち着いている。
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