敏腕パイロットは契約妻を一途に愛しすぎている

 匡くんの口元がふっと優しく緩んで笑みを浮かべる。

「久しぶりだな、杏」
「うん、久しぶり。お兄ちゃんの結婚式以来だね」
「そうなると……三年振りか」

 そんなに長く会っていなかったのによくお互いのことに気付けたと思う。

 匡くんとは実家が同じマンションの同じ階のお隣同士。兄の親友ということもあり、子供の頃は頻繁に顔を合わせていたし仲もよかった。

 けれど、お互い社会人になり実家を出ると会う回数も自然と減っていき、たまに会っても匡くんの私に対する態度がなぜか冷たくて避けられているような気がしていた。

 彼になにかをしてしまった覚えはないものの、嫌われてしまったのだろうか……。そんな不安を抱えたまま三年ほど疎遠になっていたが、突然の再会が嬉しくてとっさに声を掛けてしまった。

 私の呼び掛けに応じてくれたということは、今の匡くんはあの頃とは違って私を避けていないのかもしれない。

「まさか沖縄で杏に会うとはな。ひとりで旅行か?」
「違うよ、仕事。匡くんは?」
「俺も仕事だ」

 どうやらお互いに仕事で沖縄に滞在しているらしい。ということは、匡くんと一緒に入店してきた赤嶺さんと女性たちは同僚だろうか。

 あれ? そういえば匡くんの職業って……。
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