敏腕パイロットは契約妻を一途に愛しすぎている

「えっ、じゃあ私の部屋はないの?」

 実家から持ってきたあまり多くない荷物をすべて運び終わり、さて荷解きをしようと思ったところでふと気が付いた。

 時刻は午後三時を迎えている。

 私と同じく今日と明日が二連休の匡くんも午前から私の引っ越しを手伝ってくれて、荷物を運ぶために自分の車を出してくれた。

 荷解きも手伝ってくれるようで段ボールを開封しながら、先ほどの私の疑問にさらっと答える。

「杏の部屋? ないけど」
「ないんだ……」

 リビングの他に二部屋あると聞いていたから、てっきりそのうちのひとつを使わせてもらえると思っていた。

「じゃあ私はどこで寝るの?」
「どこって寝室のベッドしかないだろ」
「でも私ベッド持ってこなかったよ?」

 匡くんの家で新生活を始めるにあたり持参した方がいいものはしっかりと事前に確認をした。そうしたら私のベッドはもうあるから必要ないと言われたはず。

 だからてっきり私の部屋があってそこにベッドがあると思っていたけれど、私の部屋がないのならベッドはいったいどこにあるのだろう。

「俺と同じベッドで寝ればいいだろ。大人ふたりは余裕で寝転がれる大きさだから心配するな」

 段ボールから私の衣服を取り出しながら告げた匡くんの言葉に思わず絶句する。

 匡くんと同じベッドで寝る……。

 私が心配なのは大きさとかそういう問題ではない。
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