敏腕パイロットは契約妻を一途に愛しすぎている
いくら子供の頃からの仲とはいえ、成人している男女が同じベッドで寝るというのはどうなのだろう。夫婦なら当然のことかもしれないけれど、私と匡くんはそうではない。
いろいろと考えを巡らせて荷解きの手が止まってしまった私を一瞥した匡くんがため息混じりに呟く。
「別に変な意味はないからな。もうひとつベッドを買い足すよりも今の俺のベッドをふたりで使った方が効率的だと思っただけ。妹みたいに思ってる杏に欲情して襲ったりしないから安心しろ」
匡くんはそう言うと私の衣服を持って立ち上がる。
「これ適当に寝室のクローゼットに入れておくから。杏も手を止めていないでさっさと片付けを済ませろよ。夕飯の時間までに終わらなかったら引っ越し祝いの寿司は抜きだ」
「えっ、お寿司! でも引っ越し祝いって蕎麦だよね」
「蕎麦がいいのか」
「いいえ、お寿司がいいです」
そうとなればさっさと片付けを終わらせなければ。
今夜から匡くんと同じベッドで眠る問題はひとまず置いておこう。
私は段ボールから荷物を取り出して、家主である匡くんの指示に従いながらそれらを順番に片付けていく。
ふたりで協力して午後六時にはすべての片付け作業が終わり、私の引っ越しは完了した。