敏腕パイロットは契約妻を一途に愛しすぎている
約束通り匡くんがお寿司の出前を頼んでくれたので、ダイニングテーブルに向かい合って座りふたりで食べる。
「そういえば私思ったんだけど、匡くんってパイロットよりも俳優の方が向いてるんじゃないかな」
大トロをぱくりと食べながら言うと、いきなりなにを言うんだという冷めた視線を向けてくる匡くんにそう思った理由を説明する。
「ほら、この前うちのお母さんに結婚の報告をしたとき匡くん言ったでしょ。私のことが好きとか、早く俺の妻にしたかったとか、必ず幸せにするとか」
「言ったな」
「あのセリフすごくリアルだったから。お母さん感激して泣いてたし、私もドキッとしたもん。匡くん演技の素質あるよ。背も高いしカッコいいから今から俳優目指してみれば?」
「目指すわけないだろ」
なにを馬鹿なことを言ってるんだと匡くんに睨まれる。私の冗談の提案はあっさりと断られてしまった。
「杏こそ俺の両親になんて言ったか覚えているか」
「私? なんか言ったかな」
この時期が旬のブリのお寿司を掴みながらこてんと首を傾げる。
「孫をせがまれて、任せてくださいと答えたのはどこのどいつだ」
「あっ……」
言ったな、そういえば。まさか匡くんがそれについて触れてくるとは思わなかった。