敏腕パイロットは契約妻を一途に愛しすぎている
「客室乗務員の女性陣の中には彼を狙っている子が多いからもう大騒ぎなのよ。どの女性の誘いにも一切乗らなかった難攻不落の彼を射止めた女性は誰なんだろうって話題で持ちきりよ」
「そんなにモテるんですか? そのエリートパイロット……」
麗奈さんの話に登場するのは私が思い浮かべている人物とは別人かもしれないけれど、どうしても彼の顔を思い浮かべてしまう。
「そうなのよ、モテるのよ。まだ三十代の若いエリート機長っていう肩書きだけじゃなくて、背も高くて顔もカッコいいの。でも本人はモテている自覚なくて、どんな女性に誘われてもさらっと断るのよね」
「そうなんですね」
三十代。機長。背が高くて顔もカッコいい。そして、女性からの誘いを断っている。
……やっぱりどうしても匡くんが思い浮かんでしまう。
「あの、麗奈さんの航空会社ってどちらでしたっけ」
確かめたくなって尋ねると「あら、言ってなかったかしら」と麗奈さんがきょとんとした顔を見せる。
「ジャパンウイングエアラインよ」
「ジャパンウイングエアライン……」
匡くんと同じだ。ということは麗奈さんの話に登場するエリートパイロットは匡くんなのだろうか。いや、でも違う人かもしれないし。
そんなことを悶々と考えながら爪の表面を磨いて艶を出していると、麗奈さんがもどかしそうに口を開く。