敏腕パイロットは契約妻を一途に愛しすぎている
どうしてここに……。
ドクンと心臓が大きく波打ち、ふたりから視線が逸らせなくなる。
一方の和磨たちは目の前のクリスマスツリーに見惚れているようで私には気付いていない。すると彼女が和磨を見ながら甘えるように口を開く。
「今年も一緒にクリスマスツリー見られて嬉しい。今日はイブだけど昨年はクリスマス当日に見に来たよね。奥さんの誕生日だったのに私のこと優先させるんだもん」
「あいつのことはいいんだよ。ただの金づるだから」
「うわっ、和磨って悪い男だよね」
彼女が楽しそうにケラケラと声をあげて笑うのを見て和磨が言葉を続ける。
「杏のことなんか最初からこれっぽちも好きじゃなかったからな。いいカモみーっけぐらいにしか思ってなかったわ」
……私は今、なにを聞かされているんだろう。
「それなのに離婚する直前まで俺に本気で愛されてると思ってんだからバカだよなぁ」
これ以上は聞かない方がいいとわかるのに体が動かない。
和磨は私のこと好きじゃなかったの? 金づるってどういうこと?
「まっ、でも杏には感謝しないとな。あいつのおかげで俺は自分の美容室を持てたんだから」
「お店の開店資金も少し出してもらって、生活費とかも全部奥さんに負担させてたんだもんね」
「そーそー。おかげで余計な金を使わずに、経営に全部回せて助かったわー。あいつ鈍感だから自分が金づるにされてること少しも気付いてなかったしな」