孤独と孤高にサヨナラを
俺の焦っている様子を嘲笑うように目の前の女は口を開く。


「私、同年代に負けたことなかったの」


過去を語る彼女は、真剣に盤面を見つめている。
その表情は俺が何度も戦ってきた強い棋士たちを彷彿とさせる。


「でも忘れもしない、小学生将棋大会高等部部門。 そこで私は南蘭太郎っていう男に負けた」


俺もあの日の出来事はよく覚えている。
準優勝を拒否して彼女は泣きわめいていた。
色んな人たちが彼女を鎮めるために頑張っていた。
俺が優勝したはずなのに、みんな俺よりも彼女のことを覚えている。

それが少しだけ悔しかった。

初めて優勝したのに、誰も俺を見てくれなかった。
泣きわめく彼女を見ていた。


「最悪だった。 一度も負けたことなかったのに、名前も知らない無名の男に負けたの。 これがどれだけ悔しかったか分かる? だから全部やめたの。 親に頼るのも、同級生と仲良しこよしをやるのも」


その後、両親が離婚して。
俺は─。


「孤独になったの」



孤高になった。
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