孤独と孤高にサヨナラを
「私の家、お金だけはあるから。 別に賞金なんて必要ないもの」

私は続けていった。
煽り言葉になっているのなんてわかってる。
でも本当のことだったから。
私にはお金があった。
祖父が稼いだお金は膨大だし、両親も大手企業勤務。
私が将棋だけに全てをかけられたのもお金があったから。

でも逆にいえば私にはお金しかなかった。

「女なのに将棋のプロ? 本気でいってるの?」
「ねぇ、将棋なんかしないでカラオケいこーよ」
「男じゃないんだからやめろ」
「大学は? 将棋するから入らないって、あなたねぇ」

周りは私が将棋のプロになるなんて1ミリだって思ってなかった。
だからこそ反発精神でここまでこれた。

ずっとここにくるまで孤独だった。

アンタみたいに才能なんてない。
応援してくれる人もいない。
でもお金だけはあった。
だからここまで努力し続けることができた。
その環境だけは紛れもない事実。

「だから私に白星をよこしなさい」

私がそう告げると彼の目が変わる。
今までの迷子のような目じゃない。
そこには一人のプロ棋士がいた。
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