孤独と孤高にサヨナラを
前編
”よろしくお願いします”の言葉に条件反射してしまい、私も「よろしくお願いします」と告げ頭を下げた。
これが対局を始める合図。

さっき私が話している最中に振り駒をして先手は南蘭太郎に決まっている。
将棋に置いて先手というのは若干の有利を表す。

彼の手がゆっくりと動き駒を動かす。
私も盤面を見ながら駒を動かしながらチラリと彼の顔を見る。

やっぱり可笑しい。

私の言葉を無視するような性格じゃなかったはず。
個人的に思い出したくない記憶だったから思い出さないよう意図的に見ないようにしていたけどこんなに変わるものなの?

あのときの優しい声色はどこにもない。
ただ冷徹で冷たい静かな声。

一体どうしちゃったの?
それとも本来の貴方はこういう声なの…?

不安になる私を他所に対局は進んで行く。

パチ、パチと将棋を指す音しか聞こえない。
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