触れていいのは俺だけだから
(おしゃれすると、何だか前を向きたくなる……。不思議だな……)

性格まで明るくなれたような気がした。

「よかったら、また俺に髪の毛切らせてね」

ニコリと凌に微笑まれ、杏菜は美容室は絶対ここに来ようと決めたのだ。

おしゃれをしたおかげで、高校の時よりも友達が多くでき、大学デビューを無事杏菜は成功させることができたのである。

「はい、こんな感じです」

二時間ほどかけてカットとカラーが終わり、凌がニコリと笑う。鏡の中には、明るくて活発そうな雰囲気の杏菜が映っている。

「わあ、明るくていい感じです!生まれ変わった気分です!」

「よかった。また気になるところがあったら、いつでも連絡してきてね」

優しく、それでいて満足そうに笑う凌に杏菜は「はい」と言いながら笑い、お金を払ってお店を出る。

「また来てね」

お店の外で手を振る凌に杏菜は頭を下げ、わくわくした気持ちで買い物へと向かうのだった。
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