触れていいのは俺だけだから
そして迎えたカット当日、おしゃれをして杏菜は「charme」へと向かう。担当をしてくれたのは、小柄で可愛らしい女性だった。

「本日はどのように致しますか?」

「えっと……」

おしゃれなヘアスタイルが載せられた雑誌を見つつ、杏菜は「こういうの、いいですよね」とふわふわに巻かれた髪を指差す。杏菜の髪はストレートだ。

「アイロンで巻くの、正直面倒くさいことがあって……」

「わかります!忙しい時とか、面倒になっちゃいますよね〜」

女性は人懐っこい笑みを浮かべ、カットとカラーの他にパーマもかけることを提案する。パーマをかければワックスで整えるだけで、ふわふわの髪が作れるので便利だ。

「じゃあ、パーマもかけちゃいます!」

「わかりました!それじゃあ、準備色々としてきますね〜」

大学のこと、趣味のこと、たくさんのことを話しながら杏菜の髪は綺麗になっていく。そして三時間後、杏菜の髪はストレートからふわふわに変わっていた。

「わあ、可愛いです!」

笑顔が浮かぶ杏菜に、女性は「よかったです」と微笑む。ふわふわの髪は童話に登場するお姫様のようだ。
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