八千代くんのものになるまで、15秒


そう言った八千代くんの手には、確かに絆創膏や消毒液があった。

ガーゼに消毒液を染み込ませて、私の膝にそっと当てる。


一瞬痛みを感じたけれど、すぐにそれもなくなった。



「ケガしたらすぐに救護テントに行くように言われてたのに。どうしてすぐ来なかったの」
「や……そんな大したケガじゃなかったし……」

「脚の方はね。でも右手首はそんなことないんじゃない」



う、と言葉に詰まる。

確かに、転んだ時についた右手がさっきからずっとジンジンと痛かった。


膝に絆創膏を貼ってくれた八千代くんは、今度は湿布を取り出して。

「自分でやるよ」って言ったけど、「いーから。大人しくしてて」と、軽く流されてしまった。

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