八千代くんのものになるまで、15秒


「でも、転んだのに結局2人も抜かしちゃうなんてすごいね」



八千代くんの手が、私の右手に触れている。
優しい手つきで湿布を貼ってくれて、
ただの手当てなのに、それだけでも私の心臓はドキドキとうるさい。



「見られてるなんて思わなかった……」



何とか絞り出した言葉に、八千代くんはクスクスと笑った。



「普通に見るでしょ。転んでもずっと前だけ向いてて、倉木カッコよかったよ」

「……」



カッコよかったのは、八千代くんもだもん。




「──百合さん、なんて言ってた?」




八千代くんはチラリと私を見て、困ったように小さく笑った。

「またそーいう顔する……」なんて呟いて、机に頬杖をつく。
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