八千代くんのものになるまで、15秒
『梓希くん、カッコよかったよ!何だか感動しちゃったなぁ……』
どうやら百合さんも、八千代くんのことを格好いいと思ってくれたらしい。
そっか、それなら良かった……
「……でも、その後に、」
『梓希くんが踊ってるところ見て、仁くん少し泣きそうになってたんだよ?
相変わらず弟想いなのが仁くんらしくて、笑っちゃった』
「──敵わないなぁって、思ったよ。やっぱり百合さんの中にはいつでも仁がいるんだ」
八千代くんのその静かな声に、私はぎゅっと手のひらを握りしめた。
「八千代く、」
「けど、前より全然、しんどくない。」
「え……」
「百合さんが、今幸せそうに笑ってるなら、なんかもうそれだけで十分だって思った。」