八千代くんのものになるまで、15秒
テーブルに頬杖をついて、梢は私をじっと見た。
「じゃあ、もしこの先、八千代に彼女ができたらどうするの?」
……別に、どうもしないよ。
八千代くんが好きになった人で、八千代くんが幸せなら、私はそれでいいよ。
っそれでいいはずだもん。
「──ごめん、隣いい?」
ガタッと椅子が引かれ、隣に誰かが座る。
石けんのような良い匂いがふわりと香ったその瞬間、授業の始まりを知らせるチャイムが鳴った。
「あー、はは、良かった、ぎりぎりセーフ」
「や、八千代くん、」
急いできたのか、少し息が乱れた八千代くんは、鬱陶しそうに前髪をかきあげた。
それから私の視線に気づいてニコリと微笑む。