八千代くんのものになるまで、15秒


きゅっと、唇を引き結んで、ゆるめて。
息を吐き出して、八千代くんを見つめる。



「八千代くんのこと、私も、下の名前で呼んでいい……?」



"梓希くん"って、呼んでもいい?



「連絡先も、私だって交換したいよ……」
「……倉木?」

「皆、体育祭のあとから八千代くんのことを注目し始めたけど、」
「……」

「っわたしの方が、八千代くんのこと、ずっと見てたもん」



1年のあの時から、ずっと。
八千代くんの笑顔をまたそばで見たくて、ずっと、目で追ってた。



「……今から言うことは、ただのワガママだから、全然無視していいよ」



あのね、八千代くん。



「──お願いだから、誰のものにもならないで」
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