八千代くんのものになるまで、15秒
くらくらするの、八千代くん
『あっ、3組の選手が転倒しました──』
体育祭のリレー。
1人転んだ倉木が、歯を食いしばるわけでも、涙を浮かべるわけでもなく。
ただ、ずっと前だけを向いていたのが印象に残ってる。
「──っ、え……?」
転んでケガする方が辛いのに、俺のことになるとすぐに泣きそうな顔をするんだから、
倉木って、やっぱりどこかズレてる。
『私、八千代くんが笑ってくれるなら、何でもするよ』
こんなことを自分から言ったくせに、
『……あげないで。』
『八千代くんのことを、これ以上誰にも見せたくなかった……』
『──お願いだから、誰のものにもならないで』
泣きそうな顔で、こう言うんだから。