八千代くんのものになるまで、15秒


リレーで転んだ倉木を見て、前だけを向く倉木を見て。

真っ直ぐな子なんだろうなって、思った。


真っ直ぐで不器用で、自分の気持ちに鈍感で、もう本当、全部俺がなんとかしてあげたいって思ったぐらい。



『ひゃっ、や、八千代くん……っ!』



だって、俺に触れられて顔赤くして、潤んだ瞳で俺を見つめて。
おまけに無意識に独占欲丸出し。

そんな倉木を見たら、言葉にされなくても分かるよ。


好きって気持ち、ダダ漏れなのに。



『もしもし?瑛士?』



はやく自覚してよ。
他の男のこと考えてないで、俺のことだけ考えてよ。

って、思ったら、色々止まらなくなってた。




「──く、"倉木も"って……」



目の前で、頬を赤く染めながら口をぱくぱくとさせる倉木に思わず笑ってしまう。
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