八千代くんのものになるまで、15秒
正直、結構へこんだ。
最初から幼なじみ枠から出られないって……そんなのもうどうしようもねぇじゃんって。
蓮に想われる梓希が羨ましかったし、どうすれば振り向いてくれるのかとかも考えた。
……考えたけど。
電車の中の時みたいなあんな表情、もうさせたくなかった。
蓮を困らせたくない、笑ってて欲しいという気持ちの方が、強かった。
「っちょ、なにっ」
蓮の柔らかい髪を両手でわしゃわしゃと撫でる。
『……1年の時に、助けてもらったことがあって』
抱え込みやすいタイプだって、蓮は俺に言ったけど、それは蓮も同じだと思う。
俺に気を使って、嫌がらせを受けていることを今までずっと黙ってたんだから。