八千代くんのものになるまで、15秒


「だよね。じゃあ奥のテーブル使ってもいい?」
「へいへい。好きにどーぞ」



仁さんはため息を吐きながら、しっしっ、と手で追い払う仕草をした。

……なんか、八千代くんってお兄さんの前でも変わらないんだなぁ。

仁さんと話している時も余裕そうに笑みを浮かべていたし……。



「倉木、こっち」
「っあ!うんっ」



八千代くんに続いて店内の奥へと足を動かそうとした時、


「おい梓希」


仁さんが八千代くんの名前を呼んだ。

八千代くんと同じように私もカウンターの方を振り返ると、
ニヤニヤと口元を緩ませている仁さんがそこにいた。



「おまえら、付き合ったんか」



その言葉にドキッとしてしまう。
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