八千代くんのものになるまで、15秒
「そうだけど」
「……っえ……!?」
さらり、あまりにも自然に、普通に答えた八千代くんに、思わず彼の方をバッと見た。
「デートだから、邪魔しないでよ、仁」
そう言った八千代くんは、ポカンとしたままの私の手を取って、奥のテーブルへと進んでいく。
「は、かわいくねぇなぁ」
なんていう、笑みの混じった仁さんの声が後ろの方で聞こえた。
「──はは、顔赤いね」
「だ、だって、八千代くんが……」
付き合ってるって、さらっと仁さんの前で言うから。
「秘密にしておいた方がよかった?」
奥のテーブル席。
私の目の前に座る八千代くんが、ほんの少し不安そうに聞いてくる。