八千代くんのものになるまで、15秒


名前を呼ばれた瞬間、八千代くんがぐいっと、私の腕を引っ張った。

気付いた時には八千代くんの綺麗な顔が間近にあって。
その瞳に、目を丸くする自分が映っているのが見えて。




「っ、ん、」




唇が重なったことに、ただただ驚いた。




「……っ、な……!?」



触れたのは一瞬のことだったけど、私の頭の中が八千代くんでいっぱいになるのには十分な出来事だった。

頬が熱くなるのを感じながら、八千代くんのことを見上げる。

きっと、私いまとんでもなくみっともない顔をしてる。



「……ん?」



髪を撫でて、慣れたように耳にかけてくれる八千代くんは、私の反応を見てわざとらしく首を傾げた。

意地悪く笑ってる。
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