八千代くんのものになるまで、15秒
柔らかい黒髪に手を伸ばす。
梓希くんがいつもしてくれるように頭を撫でた。
「お誕生日おめでとう、梓希くん」
そう言って笑うと、撫でる手をとって彼はジッと私を見つめた。
くいっと微かな力で私の手を引いて、何も言わずにただ見つめるだけ。
……なにも言われてないし、要求もされていないけれど。
梓希くんがなにを求めているのかは、なんとなく分かってしまったから。
「……」
梓希くんの頬に手を添えて、ドキドキと音を立てる自分の鼓動を感じながら、
私はそっと彼の唇に自分のを重ねた。
触れるだけのキス
たったこれだけでも、私はいっぱいいっぱいなのに。
「──もういっかい」
とか、甘えるように言わないでよ。