八千代くんのものになるまで、15秒
「……むり。」
目を逸らして短くそう言えば、梓希くんがいつもの余裕のある笑みを浮かべたのが視界の端で分かった。
私の腰に手を回して、自分の方へと引き寄せる。
「倉木」と、私の名前を呼ぶ。
でも、さ。
これ、私が梓希くんの方を向いたら、またキスすることになっちゃうでしょ。
だから見ないよ、梓希くんのこと。
「……」
「……強情」
カチカチ、時計の音。
数秒の間を置いて、梓希くんはゆっくりと息を吸った。
「──蓮、」
「っ」
……勘弁、してほしい。
「蓮、こっち見て」
「……」
「もういっかいキスして」