八千代くんのものになるまで、15秒
うー……いや、でも、もうここは正直になるしかなくない?
なぜか八千代くんは私のこと引かないでいてくれるし……
お言葉に甘えるべきじゃない?
意を決して八千代くんに向き直ると、彼は私にはお構いなくその綺麗な指で本のページをめくる所だった。
……あのね、八千代くん、私ね。
「八千代くんのことが好きなんだよね」
そのタイミングで授業開始のチャイムが鳴った。
1限が始まる合図。
といっても、担当先生の体調不良が原因でこの時間は自習の予定。
文字をなぞる動きを止め、八千代くんはゆっくりと私のことを見た。
ぱちぱち、昨日と同じように瞬きを繰り返してから、ふ、と小さく笑う。
「友達として?」
「いや、何だろう、顔かな……」
「はは。正直だね」
佇まいとか、一つ一つの仕草とか、表情が、八千代くんは綺麗なんだよね。
八千代くんのそういうところを見るのが、私は好きなの。
「簡単に言うと、ファンです」
「あぁ、そういう……」