八千代くんのものになるまで、15秒


「倉木が思ってるほど大した人間じゃないないけど」と、そう言った八千代くんにぶんぶんと首を振る。




「首にキスマ付けてくるような奴だよ」

「それはそうなんだけど……」

「倉木のイメージとは大分違うでしょ」




くすりと小さく笑う。
そんな八千代くんを前に、私は昨日のことを思い出していた。


私が知っていたのは、窓側の席で静かに本を読んでいる八千代くん。

でも、昨日は……




「……正直なことを言うとね、昨日の、どこか妖しい雰囲気の八千代くんも、良かった」




お日様が似合うような、柔らかい笑顔を浮かべる姿も素敵なんだけど、

意地悪く笑って、簡単に絆されちゃいけないような、そういう八千代くんの危ない一面も、

私は見ていたいな、って思っちゃったんだよね。




「つまりね、例えば八千代くんの性格が悪くても、女遊びが盛んでも、見ている分には何の問題もないかなって……!」

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