八千代くんのものになるまで、15秒
まるで梓希くんの本当の彼女になれたみたいで、嬉しかった。
「あ。演奏終わったね」
ごめんね。
梓希くんには倉木さんがいるのに、文化祭だって、きっと倉木さんと回りたかったはずなのに。
私、ずるいことしたよね。
BGMが変わって、コンテストの司会者が舞台に立つ。
盛大な拍手が聞こえてくる。
『──え、衣装も俺たちで考えるの?』
『そうみたい。ペアルックとか、可愛い着ぐるみとか、そういうのが毎年多いみたいだよ』
『そうなんだ。どうしようか……』
『ねぇ、じゃあさ──』
「梓希くん、」
私の声に、制服姿の彼が不思議そうな顔をする。
「……"当日は制服を着ようよ"って言ったのはね、少しでも、梓希くんの彼女らしく見えたらいいなって思ったからなの」