八千代くんのものになるまで、15秒


まるで梓希くんの本当の彼女になれたみたいで、嬉しかった。



「あ。演奏終わったね」



ごめんね。
梓希くんには倉木さんがいるのに、文化祭だって、きっと倉木さんと回りたかったはずなのに。

私、ずるいことしたよね。


BGMが変わって、コンテストの司会者が舞台に立つ。
盛大な拍手が聞こえてくる。



『──え、衣装も俺たちで考えるの?』
『そうみたい。ペアルックとか、可愛い着ぐるみとか、そういうのが毎年多いみたいだよ』

『そうなんだ。どうしようか……』
『ねぇ、じゃあさ──』



「梓希くん、」



私の声に、制服姿の彼が不思議そうな顔をする。



「……"当日は制服を着ようよ"って言ったのはね、少しでも、梓希くんの彼女らしく見えたらいいなって思ったからなの」
< 233 / 279 >

この作品をシェア

pagetop