八千代くんのものになるまで、15秒


もう私の口から八千代くんの名前が出るのがうんざりなのか、梢ってばいつも八千代くんの話題は避けるんだもん。



購買で買ったクリームパンを頬張る。
そんな私に梢はため息を吐いた。




「自分は八千代のファンだって言うけどさー、蓮ってあいつのこと何も知らないよね」

「失礼だなぁ、ちゃんと知ってるよー」




第一に横顔が綺麗。




「それは見た目の話でしょ?好きなこととか物とか、そういう内面の話をしてんのよ」

「あそっか。えーと……」




八千代くんの好きなこと……は、本を読むことだよね。

で、好きな作家さんは、えーっと……




「……」



ぐるり、空を仰いで頭の中で一旦考えてみてから梢の方を向く。




「私、八千代くんのこと全く知らないや」

「だろうね」




スマホのカメラ機能を使って前髪を整える梢を横目に、改めて八千代くんのことを考えてみる。



『はは、また見てる。よく飽きないね』

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